
土曜日にシティのBelvoir Theatreで「The Cake Man」という演劇を、友人のジョージ&ファーンと一緒に観てきた。
第一幕は、イギリス人がオーストラリアへやってきた頃。
黒い人形を使って、3人の白人男性がアボリジニにキリスト教と英語を強制する様子が描かれる。銃による脅しと、教育や食べ物を与えるという懐柔策が効かない奴は、さっさと銃殺してしまう。
第二幕からは、1970年代のアボリジニ一家の話に移る。
主人公はSweet Williamと呼ばれる飲んだくれの男。家には妻と11歳の息子がいる。
政府の補助金で暮らしているが、Sweet Williamがほとんど酒に替えてしまうので、生活は貧しい。妻は子供に、いつかきっとcake manが来てくれるわよ、とDreamtimeを語る。
仕事がなく酒を飲んでいるばかりのSweet Williamは、シドニーに行って金を稼ぐんだ、いい家と服を手に入れて、おまえたちを呼び寄せてやるからな、と儚い夢を語る。
そんなある日、息子の窃盗事件をきっかけにシドニーに行くことができたSweet Williamは、理由もなく逮捕され刑務所に入れられてしまう。
牢獄の中でSweet Williamは言う『俺には2つの現実が必要だ。あんたらの現実じゃない。俺のだ』。
無理やり近代化させられてしまった現実と、Dreamtimeを語り続けてきたアボリジニとしての現実。その2つのリアルをうまく折り合わせて生きるのは難しい。その状況は今も変わらないのだろう。
「The Cake Man」は作者のRobert J. Merrittが刑務所に入っている時に書かれ、こっそりと持ちだされて、人々に読まれ広まっていった。
1975年、シドニーのRedfernにあるBlack Theatre Arts and Culture Centreで初上演された時、作者のMerrittが手錠につながれたまま劇場に連れて来られた。その扱いに怒った役者たちは手錠を外せと抗議したそうだ。
下はSweet Williamを演じたLuke Carroll。

ルークはジョージ&ファーンの知り合いなので、ステージが終わってからロビーに出てきた彼としばらく歓談した。
ルークはTV番組の仕事もしているし、来週から別の劇に出演するためブリスベンに行き、年が明けてすぐに始まるSydney Festivalでの公演の準備をしなくちゃいけないと、とても忙しそうだった。
下のビデオでは練習風景が見られる。