
今日はビルのお見舞いに行ってきた。
87才になるビルは肺ガン・皮膚ガンに加えて前立腺肥大と心臓疾患を抱えている。先月はしばらく入院していたが、クリスマス前に退院して、家族で過ごせたそうだ。
食欲がないというビルは痩せて体力が落ち、イスから立ち上がるのも一苦労で、歩くには歩行器が必要だ。
肺機能が半分以下になっているので、息苦しくなると酸素吸入器を使っている。痰がつかえるのか、しゃべるのも億劫そうだ。
それでも、ぼくらが訪ねてきたことで、ビルは少し元気が出たのか、大好きなサーモン刺身弁当を食べてくれた。昨夜は何も食べなかったのよと、シャーリーがびっくりして喜んでいた。
ビルとシャーリーが住んでいるユニットは52階にあり、陽当りの良いバルコニーからは、シドニー・ハーバーに浮かぶヨットが見える。
ビルはここからの眺めが好きで、ぼくらが遊びに行くと、バルコニーに置いたテーブルでお茶を飲んだりした。
今のビルはバルコニーに出ることもできない。そんな彼の痛々しい様子を目の前にすると、いくらきれいな風景を見ても全然楽しくないものだ。
