オーストラリアでは有名な映画監督John Duigan(ジョン・ダイガン)の新作「Careless Love」が封切られたので早速観に行ってきた。
主人公はヴェトナム系オーストラリア人で、シドニー大学で学ぶ賢い女性だ。
学費を払い、失職した父親を助け、両親と弟が住む家を守るために大金が必要なので、夜は娼婦として働いている。
両親にはモデルの仕事で稼いでいるからお金は心配ないと言い、仲の良い友人や一緒に暮らしている優しいボーイフレンドには夜も図書館で勉強しているからとウソをついていた。
ところが彼女のお客の一人が殺されたことから、彼女の写真や記事がニュースになり、素性がばれてしまう。世間に恥をさらし、家族の信頼をなくし、ボーイフレンドは去り、何もかも失ってしまった彼女は、それでも最後には、二つに引き裂かれていた自分の人生を受け入れようとする。
2時間足らずの映画だし、桐野夏生の「グロテスク」のような底なしの深みはないが、なかなか面白かった。なじみのビーチやシドニー大学、Waverley Cemeteryが舞台なのも、地元民としてはなんだかうれしい。
それにしても彼女を買う男たちは皆、醜いか滑稽か哀れだ。怪しいアメリカ人アーティストと真面目らしい日本人ビジネスマンの顧客はまだマシに描かれているが。
わざわざ女子高生の格好をさせ、教室で授業をするプレイをして、スカートの中を手鏡で覗いて楽しむという男もいた。この監督は日本のHENTAI文化もリサーチしたのかな(^^;)。
主人公の専攻がSocial Anthropology(社会人類学)というのも皮肉がきいている。
ラストシーン、彼女が教授たちの前で、娼婦であった彼女の体験を交えて研究発表するのだが、どんな内容なのか詳しく知りたいものだ。