
オペラハウスのDrama Theatreで「Loot」を観てきた。<loot>とは<戦利品・略奪品・盗品>という意味。1965年に初演されたJoe Orton(ジョー・オートン)の傑作ブラック・コメディ(dark farce)である。
開演前のステージにはGod Save the Queenと女王を讃える画像が映しだされ、ビートルズがえんえんとかかっていた。ただし女王の顔には黒縁メガネと可笑しなヒゲが落書きされていて、これから見る芝居が、お上品なモノではないと予感させて面白い。
舞台では、銀行から盗んだ札束を母親の棺桶に隠すところからドタバタが始まる。「たいへんだ、刑事がやってくる。タンスに隠した札束が見つかってしまう。そうだ、おふくろの棺桶に隠そう。死体は邪魔だから代わりにタンスに放り込め。あ、頭が床に落ちて逆さまだ。ま、いいか」
カソリックや警察の権威を笑いものにし、死体を弄び、登場人物は皆カネのことしか考えていない。イギリスらしい悪趣味なブラック・ジョークが満載で大笑いである。
上の写真は、刑事役を演じたDarren Gilshenanが、床に落ちていた目玉(母親は内臓から目玉まですっかりくり抜かれていたので、これは義眼)を見つけて、なんだこれはと調べているところ。最後にそろりと舌で舐めてみるシーンでは観客のおぁぁ〜という声が充満していた。
ダレン・ギルシャナンが出るコメディはどれも面白い。このステージでも一緒だったWilliam Zappaと組んでたった二人だけで19役を演じた「The Government Inspector」や古典喜劇「The Servant of Two Masters」は素晴らしかった。
ジョー・オートンは1933年にイギリスで生まれ、数本の戯曲を書いて人気が出てきた34才の時、一緒に暮らしていたゲイの恋人に撲殺された。オートンの伝記は「Prick Up Your Ears」という題で出版され映画にもなっている。彼の人生はSex Pistolsよりも早かったパンクだった。
下は、シドニーではなくサンタ・バーバラのステージから。チラシに書かれている「オスカー・ワイルドとモンティ・パイソンがクロスする」という文句は言い得て妙である。