
毎年この時期には、映画館でクリスマス用の特別映画が上映される。今年は「A Christmas Carol」や「Miracle on 34th Street」と並ぶ古典的名作「It's a wonderful life」(邦題:素晴らしき哉、人生!)を観てきた。
第二次世界大戦後、戦場から戻ったフランク・キャプラが、1946年に発表したアメリカ映画で白黒である。古い映画だが、ここで扱われているテーマは今でも新しい。結構重たいストーリーなのだが、女の子たちは可愛いし、ユーモアもあり、映画としてとてもよくできている。
冒頭の神と天使の会話。自殺しようとしている主人公のジョージを救ってやれと言う神に天使が訊ねる。「彼は病気なのですか?」「いやもっとひどい。絶望しているのだ」。discourageという言葉がとても重たい。失望する・絶望する・落胆する・意欲を失う・くじく・削ぐ・萎えさせる・妨げる・抑圧する・阻む・etc。
人にとって最悪な状況に陥ったジョージは川に飛び込んで死のうとしていた。その時天使が舞い降りる。といっても下の写真の左側に立っている、さえない爺さんだ。天使としてはまだsecond classなのでまだ羽根はないそうだ(^_^;)。

ジョージの守護天使だという爺さんは、自殺を思いとどめようとするが、もちろんジョージはそんなイカレタ爺さんの言葉は本気にしない。ジョージは冷たい川に飛び込んで濡れた身体を震わせ、「おれなんか生まれてこなけりゃ良かったんだ」とつぶやく。爺さんは「そういう手があったか」とうなずいて、ジョージが生まれなかった世界に連れてゆく。
その世界でジョージは「透明な存在」だ。誰も彼の事を知らない。妻も母も友人たちも、彼を見知らぬ得体の知れない人として拒む。彼はこの世界で一人ぽっちだ。自分がやってきた事、存在した形跡が一切無い世界で、ジョージはやっと気づくのだ。こんな世界は嫌だ、良いことも悪いこともあった元の世界へ返してくれ、もう一度生き直したい。そして天使はジョージを元の世界へ戻す。
映画の最後、ジョージの危機を救ったのは、やけくそになって妻子に当たり散らして家を飛び出したジョージを見捨てなかった妻のメアリーの「愛」と、ジョージの経営する住宅ローン会社のおかげで家を建てられた町の人たちの「信頼」だ。
ジョージを自殺寸前にまで追い詰めたあくどい大富豪のポッターはまだ生きている。この世界では良いことも悪いことも続いてゆく。それでもこれからは何があってもジョージは「It's a wonderful life」と自信を持って言うだろう。
