
「The Hurt Locker」(ハート・ロッカー)は今年のアカデミー賞で作品賞など6部門受賞に輝く名作のはずなのだが、実際はなんとも中途半端な<反戦>映画だった。映画の冒頭で明示される「war is a drug」というメッセージに沿うなら、主人公の戦争ジャンキーぶりをもっと強調すべきだ。あのラストシーンでは、自ら望んで戦地に向かう勇敢さを称えるように思えてしまう。
砂漠の中での銃撃戦では、この明るい太陽の下で俺たちはいったい何をやっているのか、と静かな青い空を仰ぎ見たくなるような虚しさを表現していたのに、その後のストーリーにつながっていかない。イラクの爆弾テロの残虐さと対比されるように、アメリカ兵がイラクの一般人に対する礼儀正しさが強調され、主人公の熱血漢でイイ人ぶりが描かれるばかりだ。
麻薬も戦争も金儲けになる。カネになるなら、私たちの良いココロもうまく利用される。勇気も祖国愛も、やりがいのある仕事や熱い友情も、誰かを儲けさせるよう使いたされるのだ。今は戦争が会社の事業として進められる時代だ。私たちはそのからくりに敏感であるべきだと思う。
ヴェトナム戦争の後、たくさんの映画が作られた。多くの人々を感動させ、映画産業を儲けさせた。シルヴェスター・スタローンのランボーの頃からアメリカは全然変わっていない。残念ながら。