
昨夜は、大林宣彦監督の遺作「Labyrinth of Cinema」を観てきた。
原題は「海辺の映画館-キネマの玉手箱」。
見に行ったのは、ノースにある「Hayden Orpheum Picture Palace」という、老舗の映画館。

美しいアール・デコの建築が残されている貴重な映画館だ。

「Japanese Film Festival」の一環で、シドニーや各地で、日本映画が上演されている。
『Radical Japanese Filmmaking from the 1960s to the 2000s』というカテゴリーでは、新宿泥棒日記、エロス+虐殺、薔薇の葬列、ピストルオペラ、鉄雄、という濃い映画が目白押しだったのだが、日時が都合悪かったり、早々にチケットが売り切れてしまい、どれも見逃してしまった。
昨年、ガンで亡くなった大林宣彦は、今回のフェスで追悼特集が組まれている。
「Labyrinth of Cinema」は160分という長尺で、彼の映画人生の集大成だ。
核にあるメッセージは真剣深刻な「反戦」なのだが、ポップで軽薄でフザケたシーンが同居している。
あらゆる映画の要素を詰め込んでシャッフルした構成は、昔懐かしい、ウィリアム・バロウズのカット・アップとフォールド・インという手法を思い出した。
ストーリーも時空もcut-up/fold-inされ、因果関係はズタズタだ。
映画の中の中の・・・入れ子構造の中で、切り刻まれたロマンスとドタバタ劇と殺戮シーンの断片が放り出されている。
それでも、反戦という核だけは最後までブレることはない。
タイトル通り、めまいがするような映画の迷宮を味わえる大作だ。